校長室便り
令和6年度 校長室便り⑥
- 2024年08月02日
- 校長室便り
令和6年度 第一学期終業式あいさつ
皆さんおはようございます。今日は「未来の教室」という話をして校長挨拶とします。
「未来の教室」という言葉は、新型コロナウイル感染症が蔓延する以前からあった言葉です。その当時、日本の教育はデジタル化、ICT機器を用いた教育を強く推し進めようとしていましたが、なかなか日本全国において、デジタル化やICT機器を用いた教育を広めるのに時間を要していました。
ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、生徒が登校できない状況がありましたが、それを打開する一つとして、ICT機器を用いた遠隔授業や個別指導が急速に発展しました。このことは、生徒の皆さんも知っている通りです。
そして、生徒一人一人がタブレット端末やスマホなどを用いて、学習を進める教育が今では普通となっています。これからは生成AIを用いる学びもあるかもしれませんね。
実はこのタブレット端末等を文房具のように活用する授業やICT機器を用いた学びにおいて、将来こうあってほしいという教室の学びの在り方を予想して、生まれた言葉が「未来の教室」という言葉でした。
現在、その当時、未来を予想して考えられた授業、つまりタブレット端末など、ICT機器を頻繁に活用しながら進める授業や学習は実現しつつあります。
一方で、その当時、「未来の教室」を実現していく学習の中で、生徒にとって大切な事柄となる3つの指針(学び心得)が示されました。その指針となる3つの合言葉を紹介したいと思います。
一つは、「試行錯誤(しこうさくご)」という言葉です。試行錯誤という言葉、昔からある言葉ですが、この言葉を3つの指針の一つに挙げています。タブレット端末やICT機器を用いた学習の中で、なぜ試行錯誤が必要なのでしょう。どの場面で試行錯誤するのでしょう。PCゲームでのお互いの戦いなどでは試行錯誤していることになるのでしょうか。学びにおいては、少し意味が違うような気がします。
タブレット端末やスマホなどを用いた学習は、どうしても個々の活動になりがちです。一つの考え方ですが、WEB検索などで、すぐに必要となる資料や正解が示されます。自分の頭で思考し、ああでもないこうでもないと模索することが少ないように思われます。だからこそ、試行錯誤が必要なのでしょう。特に、人と人のつながり、友と友のつながりをもち、議論を交わしながら、互いに学びを磨き合い高め合うことを忘れてはいけない。このことを、試行錯誤という言葉で表現しているのだと考えています。
もう一つは、「越境(えっきょう)」という言葉です。越境とは、境界を越えるという意味です。それでは、何の境界を越えるのでしょう。よく言われる自分の限界を越えるとかいう意味もあるかもしれませんね。私は、この越境の一つの意味として、今の自分の価値観や考え方の境界を越えることというふうに考えています。
生徒の皆さんも経験があると思いますが、今、WEBで検索をすれば、すぐに必要な情報が得られます。一方で、検索した内容に関連する商品やイベントが、別のアプリからも広告として送られてくることがあります。特にYoutubeや映画などを見ると、「貴方が興味があるようなコンテンツは○○です。」といった次への興味・関心を惹きつける広告や案内が示されます。自分の興味ある事、関心のあることに引き込まれていくことは楽しいことだけど、反対に恐ろしさや怖さも感じています。
それは、自分の興味・関心のある世界へ引き込まれる楽しさとともに、その反対側にある自分の興味のない関心のない世界、知らない世界は、ずーっと知ることも、触れることも、学ぶこともしないですむ、自分の価値観や考えだけ世界での生活となっていきます。
生徒の皆さんは、これからまだまだ幅広く柔軟な価値観や考え方を育てていく必要があるのに、SNS等を用いることで、偏った世界のみへ引き込まれていく。このことは、生徒の皆さんの人生においては不不幸なことかもしれませんね。
だからこそ、今、持っている価値観や考え方、興味・関心を少しでも超えてみる、越境してみること、さらには今、自分が持っている世界と全く違った世界と繋がってみることも、越境という考え方につながっていると思います。
それでは、最後の言葉です。それは、「50センチ革命」という言葉です。50センチ革命ってなんだと思いますか・・・・・・。50センチとは人の一歩の歩幅を表しています。もうちょっと広いかもしれませんね。つまり「一歩踏み出す」ということを意味しています。勇気をもって一歩踏み出すことを50センチ革命と表現しているのです。
自分で考えたこと、思ったことを、一歩踏み出して行動にする。「失敗したらどうしよう」とか、「うまくやれなかったらどうしよう」ではなく、まず具体的に、一歩踏み出して行動を起こしてみるということです。
先日のパリオリンピックで日本人第1号の金メダルを獲得した女子柔道48キロ級の角田選手が、インタビューの中で、「苦しかったこともありましたが、一歩踏み出して頑張ってみてよかった。」と語っていました。今日の終業式の挨拶に盛り込んでいた言葉なのでびっくりしたところです。
ちょっと長くなりましたが、生徒の皆さん。「試行錯誤」、「越境」、「50センチ革命」この3つの言葉を、この夏休みに考えながら過ごしてくれると嬉しく思います。
生徒の皆さんが、もし、この夏休み中に、人と人とのつながりをもう少し創ってみようと思ったならば、是非、行動を起こして人と繋がってほしいと思います。
また、これまでの自分の価値観や考え方のみならず、知らない価値観に触れてみよう、知ってみよう、学んでみよう、違う世界と繋がってみようと思ったならば、是非、行動してほしいと考えます。何か一つ、一歩踏み出す「50センチ革命」を起こしてほしいと思います。
それでは、明日から始まる夏休みを有意義に過ごしてください。そして、8月26日の第二学期の始業式に皆さんと元気に会うことができることを楽しみにしています。以上で、終わります。
令和6年7月30日