校長室便り_archive

校長室便り⑨

  • 2023年12月21日
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「命の教育」講演会を終えて

講師:西村宏堂さん
演題:「自分らしく生きる ~ハイヒールを履いた僧侶~ 」

12月5日(火)に中学校・高等学校の全生徒対象に「命の教育」講演会を実施いたしました。今年度は、生徒指導部と生徒会等とが協議・検討して、ハイヒールを履いた僧侶として、多くのメディアでも紹介されていて、LGBTQ+活動家としてご活躍されている西村宏堂さんに来ていただきました。当初は、担当の先生から、西村さんにお越しいただくことは難しいかも知れないとの報告を受けていたのですが、結果的に講演会が実現して、信じられない気持ちで当日を迎えることができました。

西村さんの日程もあり、日帰りでの講演となりましたが、時間の許す限り、講演後も生徒の相談等に対応していただき、西村さんをはじめ関係者の方も、宮崎学園中学校・高等学校に対する思いが深まったようでした。

講演は、中学校と高等学校の生徒全員に是非、対面で聞かせたいということもあり、本校の誇る大坪記念ホールでは、1200名を超える生徒を収容できず第1体育館での講演会となりました。中学生と高校生がひしめく中、宏堂さんが入場されると生徒は、その一挙手一投足に見入り、静かに講演が始まりました。

本校のためにパワーポイントも準備されており、昨年のNHK紅白歌合戦の審査員でのエピソードから始まり、アメリカにわたり大学やミス・ユニバースのメイクアップアーティストとして活動していたこと、その中で、自分らしさを表現したり、自分らしく生きる意味を見出したりしこと、実家がお寺であったが、そのことにただ単に偏見や批判をいだくのではなく、自らが経験(出家)して浄土宗の僧侶として修業を積む中で、正しくものごとを見つめることや判断できるようになったことなど、自分の生き方を模索してきた実体験をもとに、淡々と、整然と、そして平易な言葉で、心を込めて生徒へ語りかける講演でした。生徒は、講演用のメモ用紙を片手に、自分の心に刺さった言葉や感動した内容を書き留めながら、宏堂さんの雰囲気や言葉に引き込まれていました。

講演の終盤の質疑応答では、生徒から事前に集めておいた質問に対して、宏堂さんから丁寧に回答いただきました。最後に生徒会長である宗姫奈さんのお礼の言葉がありましたが、宏堂さんの著書から抜き出した言葉を、生徒会で浄書し、体育館2階の手すりから垂らした大きな垂れ幕を紹介するとともに、宗さん自身が講演を聞いての素直で心のこもったお礼の言葉を述べてくれました。体育館を出て、控室に戻る途中、宏堂さんが私に対して、「すばらしい挨拶でしたね。感動しました。」と生徒会長:宗さんのお礼の言葉に深く感心されていました。(さすがミヤガクの生徒会長!)

宏堂さんが控室にお戻りなると、ゆっくりする間もなく、生徒の訪問が続き、一人ひとりの相談などに対応されていました。宮崎空港へ向かう時刻まで、時間の許す限り、生徒との面会をされていました。

以下に、生徒の感想を紹介いたします。感想の記入欄は6行あるのですが、どの感想もぎっしり書かれており、その一部のみを転記いたします。

〇以前から自分の生きる意味や価値がわからなくて悩むことがあります。講演を聞いて、少し悩みが軽くなった気がします。(高3)

〇「知らなければ批判にならない。批判するなら正しい知識をもって、そのことを経験するなどして批判しなければならない。」という言葉が心に残りました。外見や気分だけで人を判断しないように気を付けようと思います。(高1)

〇時々、周りの大人の意見に振り回されてばかりで、自分自身を見失いそうになる時もありますが、改めて、自分が楽しかった、よかったと思える納得のいく道を選んだら、それが答えになるんだなと思いました。(高2)

〇「みんなが正直でいられる環境を創るとすべての人が生きやすく、豊かになる。」という言葉に感銘を受けた。(高2)

〇周りの友達で、その人のことを自分は知っていると思っていても、その人は素を出せないかもしれないので、その人が自信をもって本当の姿を見せてくれた時に、その人のことをすべて受け入れられる広い心を持ちたいです。(高2)

〇自分の嫌いなところにうんざりしたり、周りと比べて自信を無くしがちですが、嫌いなところも納得いかない自分も、ありのままの自分として受け入れたり、励ましたりして自信に変えようと思いました。(高2)

〇自分の気持ちを示したり、何かについて想像したりするときには、今回学んだ「人と会うこと」「場所に行くこと」「情報をえること」を念頭に置いて、皆が、できる限り自分らしさを表現できるといいと感じた。(高1)

〇自分だけは劣っているとか、優れているとか思わず、たくさんの人を尊敬し、よいなと思ったことは真似をして、自分の人生を歩んでいきたいです。(高3)

〇まだ自分の持っている個性に気づいていませんが、個性に気づいたとき、自信をつけて人に応援されて自分を好きになれるように頑張ります。(高1)

〇自分にはコンプレックスがあり、人に見られないように中学生のころからずーっと隠してきましたが、私の身体は私自身のものなんだと思わせてくれました。本当に感謝しても感謝しきれません。(高2)

〇「私の人生だから私が納得する生き方を選んでいくの。性別だって私が決める。」は心に響きました。「人としての価値は皆同じ」という言葉を大切にして生きていきたいです。(高3)

〇周りに合わせることも必要ですが「一番大事なのは自分の気持ち」という言葉が一番印象に残った。自分の意見を自分が見ようとせず、周りにばかりに目がいかないようにしようと思った。(高2)

〇この世が生きにくく感じているのは、私だけではないんだと分かって少し軽くなりました。(高1)

〇普通とはどういうことかと、ずーっと悩んでいました。人としての価値はみんな同じなので無理やり形にはめ込もうとするのではなく、自分に合った形を探していくことが大切だということが分かった。(中)

〇「本当に幸せな人は、人を罵ったり、差別したりしない。差別したくてするのではなく、差別することでしか自分を肯定できない。」という言葉にすごく納得し、心に残りました。(高1)

〇「自分なんて生きる意味はない。」とかつらくなった時に考えてしまいます。今日の講演での「生きる意味が無いていうことはない。うれしいとか楽しいとか、そういう感情に少しでもなれたら、そこに意味がある。」という言葉を聞いて、自分は日々悩むことはあるし、弱い人間だけど、それでも大丈夫だよというメッセージが伝わって、心が軽くなりました。(中)

〇自分は当たり前のようにコンプレックスがあり、人と比べてしまいます。もちろん自分を好きだって思ったことはありません。ですがこの1時間で自分のことを好きになれた気がしました。(中)

〇講演で「持っているものを生かす。」というのが「一番自分らしいに結びついている。」という言葉に納得しました。(高1)

〇「納得できる一日を過ごすということが自分の生きる意味を見つけることができ、自分に自信を持つことができる。」という言葉がとても心に響きました。(高3)

〇自分らしく生きればいい、自分の色を強みにする。人と違っても自分らしさを出せば自然に自分と向き合うことができる、他人に迷惑をかけない限り自分を自由に表現するなど、多くのことを学ぶことができました。(中)

〇すっごく生きるのが楽になりました。クラスや集団に馴染むために普通になるように、いろいろなことを気にして皆と同じになるように心がけていたけれど、ありのままの自分でいいんだと思うようになりました。(中)

生徒の感想を読んだ担任や副担任から、「この生徒は、こんなことを考えていたんだ。」とか「私には、考えも及ばないことを思っていたんだ。」など、教師自身が生徒の感想文を読んで感動していました。宏堂さんの一回の講演で、自分の心を開き素直に自分の考えを表現している生徒の感想にくぎ付けになったそうです。

私たち教員は、日頃、教壇に立ち、授業したり、面談をしたり、生徒とはコミュニケーションをとっているつもりですが、生徒の心の奥では、様々な悩みがあったり、多様な考えを抱いていたりしている。宏堂さんの講演をきっかけに生徒の真の姿を知ることができたことに、改めて、教師として自戒するとともに、宏堂さんの真実の言葉とその強さに感銘を受けたところです。

私もミーハーながらご一緒に写真を撮らせていただき、著書「正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ」(サンマーク出版)にサインまでいただいたところでした。

次に宮崎に来県する機会があれば、ぜひ、宿泊していただき、宮崎の美味しい食文化を堪能いただきながら、お話をしたいものです。

西村宏堂様。ご多用の中のところ、宮崎学園中学校・高等学校にお運びいただき、生徒や教職員に多くの言葉と心を残していただいたことに、衷心から感謝申し上げます。

ありがとうございました。

 令和5年12月22日 校長 押方 修